公認会計士・税理士:佐伯直毅
投稿日:2023/9/17
発生してからでは手遅れ!押さえておきたい相続対策のツボ
第三回 子どもたちに均等に分けたい、は無理な話?
資産が多いと揉めるのか?
「うちは揉めるほど資産がないから」良く伺うお言葉ですが、遺産分割協議がまとまらず、家庭裁判所で争われた事例の約75%が、総資産額5000万以下であることから、揉める理由に金額の大小は関係ないことがご理解いただけるかと思います。つまり相続問題とは、相続が発生したことで引き起こされる、家族間の感情のもつれである、と言えるでしょう。では、どんなことに注意すればよいか、よくありそうな以下の状況で考えてみます。
子どもたちに平等に残したい
多くの方が、「子どもたちには平等に」と希望されるのですが、それができたケースをあまり見たことがありません。理由は簡単で、それが叶うのは、相続財産が現金のみの場合だからです。不動産をお持ちの場合、子ども二人で半分ずつ相続することは可能ですが、お勧めはしていません。今後売却や賃貸など、何をするにも二人の同意が必要になるため、不動産の名義は一人が望ましいのです。そうすると「子どもたちには平等に」は可能でしょうか?
例えばこんなケース
被相続人=母、相続人=長男と長女の2人、母の資産が、土地建物3000万、現預金1000万で合計4000万だとすると、相続税の基礎控除は4200万なので、相続税はゼロ。土地建物を長男、現預金を長女が受け取るとすると、数字上は長男3000万、長女1000万。平等でしょうか?長女が法定相続分の2000万を要求すれば、長男は差額の1000万を現金で渡すことになります。有効な遺言書があれば、遺留分1000万は確保できているので、金銭の移動はありませんが、どちらにしても長男長女は納得できるでしょうか?
平等の定義も難しい
更に、それぞれのお婿さん、お嫁さんの意見が加わることもよくあります。今までに自宅購入の援助をしてもらった。特定の孫にだけ援助していた。介護の面倒を誰が見た等々。相続が発生して、分割協議書の金額を見て初めて出てくる感情のもつれ。平等にと言っても、相続財産だけでなく、今までの経緯も含めて一体何が平等か、現実的には調整が難しいというのが実感です。そのため事前に想定、対策できることは実行しておきたいですね。それが遺言書になるのか、生前贈与になるのか、やはり全ては資産構成と、家族構成の現状把握から。
「うちの子たちは揉めないから大丈夫」という120%の確信があれば構いませんが、そうでなければ、揉める要素がないか、一度専門家に相談してみてはいかがでしょうか。
税理士法人ななほし会計
代表社員 公認会計士・税理士 佐伯直毅