公認会計士・税理士:佐伯直毅
投稿日:2023/11/1
発生してからでは手遅れ!押さえておきたい相続対策のツボ
第四回 教育資金の一括贈与はここに注意
1500万円非課税の魅力
平成25年の制度開始以来、期限延長を繰り返し、現在は令和8年3月末まで有効となっている、教育資金の一括贈与制度。最大1500万円まで贈与税がかからないとあって、非常に人気があり、既に孫たちにしてあげたという方や、孫が産まれたらすぐにしようと思っている方も多いのではないでしょうか?相続対策として考えた場合には、非常に魅力的な制度ですが、実際に贈与した方々から後悔のお声が多いのも事実です。ではどんなところに注意をすればよいのでしょうか。
使い勝手が悪い?
この制度は、贈与するお金を銀行などに預け、子や孫が実際に支払った学校や塾などの教育費をプールした贈与資金から精算する。そんな制度なのですが、使途が教育資金に限定されており、銀行が認めないと精算してもらえません。対象となる支払いが限定されており、学校の寮ではない家賃や、一般書店で買った教科書代は認められなかった、また、普通に授業料を払うにも手間がかかり面倒だし、使いきれるのかな?そんなお声も聞かれるようになってきました。
金額設定と大切な注意点
以上のことから、思ったよりも教育資金に使えないケースや、自宅通学で国公立大に進学できたなど、進路によっては1500万を使いきれず、結局贈与税が発生するケースもあるため、子や孫の進路なども見据えたうえで贈与金額を決めることがポイントになります。そしてそれ以上に大切な注意点が、お子さん、お孫さん、皆さん平等になっていますか?という視点です。例えば長男長女で孫の人数が違う、孫がいない、いるが成人しているなど、この贈与によって争族の原因をつくることになる場合があります。そのため誰にいくら贈与するのかはしっかりとした見極めが必要といえるでしょう。
そもそも非課税
ここまで色々と注意点などをお伝えしてきましたが、実は一括贈与の制度を使わずとも、そもそも子や孫の教育費を都度、扶養義務者が直接払う場合、贈与税はかかりません。例えば大学の授業料をおじいちゃんが振り込んであげた。そんな場合はそもそも非課税なのです。であれば、入学や進学の度に、おめでとうと言って通常必要と認められる「生活費」「教育費」を振り込んであげれば非課税ですし、その方がお孫さんにありがとうと感謝される、ということもあるでしょう。まとめて渡して年数が経つにつれ、有り難味が薄れてしまうのも事実ですので…。もちろん、年齢や健康状態によって、早く贈与したい場合には魅力的な制度ではありますので、以上のような視点で、我が家にはどの方法がよいのか考えてみてはいかがでしょうか。
税理士法人ななほし会計
代表社員 公認会計士・税理士 佐伯直毅